看板の大きさの科学 看板の大きさの科学

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人間の目の感覚はとても不思議なものです。
モノを見るとき、実際の大きさと視覚的な大きさにかなりの誤差が生まれる場合があるからです。

私は実家が看板屋であることに影響されてか、目に入る看板がどれくらいの大きさかをいつも気にします。
看板は大勢の人々から注目されるものだけに、その大きさを決めることがとても難しいのです。

作るときにはとても大きな看板でも、実際に設置すると思ったより小さく見える場合も多々あります。
また逆に、普通に見える看板も、実際の大きさに驚かされる場合もあります。

例えば、映画の聖地ハリウッドの看板があります。"HOLLYWOOD"の9文字が山に建てられているあの看板です。

この看板は1文字の幅が7m、高さが14mもあるといいます。9文字合わせると全長が実に100m近くにもなるのです。これほど大きいことはなかなか知られていないのではないでしょうか?
しかしながら、この看板は1キロメートル離れた場所からみると、手元の紙に印字された10ポイント程度にしか見えません。感覚的にはさほど大きく見えないのです。

そこで、看板が十分なメッセージを伝えるためには、実際にどれほどの大きさが必要であるかを求めてみようと思います。


まず大きさの概念を明確にするために、表現を使い分けます。
物理的に決まる「実際の大きさ」と、人間が感じる「視覚的な大きさ」の2つです。

「実際の大きさ」はその言葉通り、ものさしで測った絶対的な大きさです。

一方で、「実際の大きさ」が同じものでも、人間にとっては近ければ大きく見え、遠ければ小さく見えます。これが「視覚的な大きさ」です。


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図「視覚的な大きさ」

では「視覚的な大きさ」はどのように表現できるでしょうか?

人間は眼球によって正面の映像を捉えます。眼球に届く光は角膜と水晶体によって屈折され、網膜に届きます。このとき、網膜にどれほどの大きさで映るかが人間の「視覚的な大きさ」となります。

一般的にこの「視覚的な大きさ」を表現するために「画角」が用いられます。
これはレンズ(角膜)の中心から見て上下左右に何度まで占めるかを意味するものです。
人間にとって大きく見えるものは画角が広く、小さく見えるものは画角が狭くなります。

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図「画角と視覚的な大きさ」


画角を決める要素は、「実際の大きさ」と「距離」の2つです。


「実際の大きさ」と「距離」を調整して欲しい画角を決定すれば「視覚的な大きさ」を決定できるのです。

では、具体的に看板の大きさを決めてみましょう。
例えば、電車の窓から見える近くの建物の文字(距離20m)が、A4用紙に30ポイントで印字した文字を手元で見る(距離50cm)のと同じ「視覚的な大きさ」を得るためにはどれほどの「実際の大きさ」が必要でしょうか?

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細かい画角の計算まで持ち出すと難しい話になってしまいますが、今回の問題は比較的簡単に解けます。相似図形の比率問題に置き換えられるからです(図)。比率の式は以下のとおりになります。

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距離a : 実際の大きさA = 距離b : 実際の大きさB

30ポイントで印字した文字は約1cmになります。これを距離50cmで見ます。この時と同じ画角を20m離れた文字で得るためには以下のようになります。

50 [cm] : 1 [cm] = 20 [m] : X

この比率計算を解くと

X = 20 [m] ÷ 50 = 40 [cm]

となり、必要な大きさは 40cmであることがわかりました。

もうおわかりでしょうが、画角さえ固定されればこの計算は単純な比例計算になります。
(ちなみに今回の画角は約1.14度です)

X = d ÷ 50
(dは距離)

50m離れた場所なら1m、100m離れた場所なら2mもの大きさが必要になります。
高層ビルのてっぺんなんかについている看板は、とても大きいのでしょうね...。

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40cmの文字でも、看板を作っているときには間近で作業するためにとても大きく見えます。
しかしながら、実際に設置してみると小さく感じられるのです。

また、置く場所が遠くになればなるほど周りの景観が邪魔をして錯覚が起こり、感覚的に小さく見えてしまうこともあります。
そのため、看板を設計する際には、ひと回りもふた回りも大きく寸法を切る場合があるのです。しかし、それでも足りない場合があります。この感覚はとても不思議...。


皆さんも是非、身の回りにある看板の大きさを観察してみてはいかがでしょうか?
その看板を作った人の事を少しでも想像していただければ嬉しいです。

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このページは、Colspanが2011年2月20日 23:09に書いたブログ記事です。

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